天は二物を与えず

 昨年に比べて今年の秋は少し早く訪れたのではないでしょうか。昨年ほど今年は残暑に見舞われていないような気がします。夏が終われば秋が訪れ、そしてすぐに冬。正月を越すと春遠からじ。そしてまた夏。定められたテンポで季節は移ろいます。最近はその時の流れに喜びもありますが、哀愁が漂うのはやはり歳のせいでしょうか。特に黄金色の秋は秋冷と共に思いにふける季節ではないでしょうか。おっと、秋と言えば食欲の秋でもありますね。センチメンタルな季節ながら、収穫の秋を楽しむ時期でもあります。サンマ、かに、王道の松茸、どれも独特のその香りが脳裏を横切ります。月見酒も良いですね。仕事や数字に追われる一瞬のすきに気持ちを切り替えて、気分転換を図ることも大事かもしれません。動と静、緊張と弛緩、どれも交互に来るものですが、自分だけのリズムを見出してストレスを発散しなければなりません。秋は、そんな自分の精神、肉体のチェックをする良い機会なのかもしれないですね。心身の健康を振り返る季節にしてみるのも一考です。

 先日、何かのニュースで東大、京大卒のプロ野球選手の話が出ていました。歴代何人かの選手がドラフト会議で指名されプロの世界に入門しているのです。しかしながら、入団後一軍で活躍した選手はほとんどいません。一説によると勉強しながら野球をしてきた人と、野球一筋に勤しんできた人とは根本的に体のつくりが違うらしいのです。学生野球までは毎日試合があるわけでもなく、あるレベルの体力で150kmの速球も投げられるらしいのですが、その能力を維持、持続する体力が無いというのです。そのために投球フォームでも打撃フォームでも再現性に難があり、一軍に定着できないというのです。それはそうかもしれません。他のスポーツでも東大や京大の選手が活躍しているとはあまり聞きません。もう20年くらい昔の話ですが、学生アメリカンフットボールの世界で京大が常勝していた時期があります。関学や日大という私立大学の向こうを張って、常に勝利して日本一にも輝いています。この時の京大のアメフト部に入部する人は小さい時からアメフトをしていたのではなく、むしろ高校までは陸上部や野球部、剣道部、水泳部など、違うスポーツをしてある程度の基礎体力を持っている人たちだったのです。ここで読み解けるのは、決してスポーツでのし上がろうとしたのではなく、あくまでも勉強主体の生活をしていたのです。ところが、この強い当時の監督で伝説的な水野さんという方が、アメフトなどほとんど知らない新入生に対して、部分的に秀でたものを持っている学生のアメフト部への勧誘を徹底したのです。例えば、陸上で足の速い人、野球で肩の強い人、水泳部で持久力ある人、など、一芸に秀でた人たちを集めたのです。アメフトというスポーツは名前の通りアメリカでアメリカ人が考案したスポーツです。ですから、極めて合理的で様々なスポーツの要素を取り入れているのです。ラグビーのように後だけでなく、前にも手でパスを投げることができます。サッカーはプレー中にほとんど手を使いませんが、アメフトは蹴ることもでき、手で投げることもできます。守備機会と攻撃機会が野球と同じように交互にあります。そんなスポーツと心得た水野さんは、それぞれの単独の技能を持ち合わせた学生を集め、チームワークによる総合力に特化してアメフトを教えて学生アメフト界のレジェンドとなったのです。その後、一世を風靡した学生たちは卒業後どうしたのか。スポーツ界に君臨した?いえいえ、その優秀な学業成績のもと、一流企業や法曹界で新たなる本来の職業で立身出世していきました。素晴らしい人生設計ですね。天は二物を与えず、ですか。どちらも無い身は、いと悲し。あーー、うらやましいっ!